ドルコスト平均法とは
ドルコスト平均法とは、株式などの値動きがある金融商品に投資するときに、定期的に定額を購入するという方法です。
ドルコスト平均法のメリットとデメリット
ドルコスト平均法は完ぺきな投資法ではありません。最も優れているのは『安い所で買い高い所で売る』ことですから、タイミングを見計らわない定期的定額購入を行うドルコスト平均法では最高のパフォーマンスを上げることはできないのです。しかし、多くの投資家は『安い所で買い高い所で売る』という事はできません。それどころか、人気が高まって来た評判の品を高値掴みし、その価値が下落すると恐ろしくなり、損失を拡大させないために売ってしまいます。つまり『高い所で買い安い所で売る』という本来あるべき姿とは逆の行動をとってしまうことがほとんどです。
ドルコスト平均法には感情に流されず機械的な時間を分散した行動をとることで、タイミングを狙った失敗を防止することが出来ると言うメリットがあると言う訳です。
ドルコスト平均法と一括購入ではどちらがお得か
1000万円の投資資金ができたと仮定して、そんな時、最初に一括で資金を投入するのと時間を分散して購入するのとではどちらがいいでしょう。資金の時間的分散って、どの程度の差がでるのかを考えたことはありますか?
右肩上がりの相場なら少しでも早い段階で資金をつぎ込んだ方がいいですし、ボックス相場でも購入金額が平均値になるとすれば、早い段階で投入する方に分がありますよね。
しかし実際には暴落相場が存在するため、ドルコスト平均法の方が勝る場合もあるのです。既にイメージ的に掴まれているかもしれませんが、その違いについて、複雑な式は用いず単純な計算で具体的な数字を出してみたので一例として紹介したいと思います。
計算条件
購入する金融商品は株として、種々の条件は下記の通りとします。
設定値 | |
---|---|
資金 | 1000万円 |
一株株価 | 100円 |
一株配当 | 3.5円 |
株価成長率 | 2.5% |
暴落設定 | 3年目に4割下落。2年で回復 |
評価期間 | 10年 |
計算は次の4パターンです。
①最初に一括購入
②10年に分けて資金を投入
③4年に分けて資金を投入
④暴落を待って資金を投入
但し④は暴落時に底値の判断はできないとして、投入金額は最初に50%、翌年から25%とします。
年間の配当金はそのまま再投資するとし、株の購入最小単位は1株。税金は考慮しません。
計算結果
※四捨五入による多少の数字のズレがあります。
①最初に一括購入
入金/年 | 購入株数/年 | 総株数 | 年間配当 | 1株単価 | |
---|---|---|---|---|---|
1年目 | 1000万 | 100000 | 100000 | 350000 | 100 |
2年目 | 0 | 3415 | 103415 | 361951 | 103 |
3年目 | 0 | 6033 | 109447 | 383065 | 60 |
4年目 | 0 | 4788 | 114235 | 399824 | 80 |
5年目 | 0 | 3882 | 118117 | 413410 | 103 |
6年目 | 0 | 3916 | 122033 | 427116 | 106 |
7年目 | 0 | 3947 | 125980 | 440930 | 108 |
8年目 | 0 | 3975 | 129955 | 454843 | 111 |
9年目 | 0 | 4001 | 133956 | 468845 | 114 |
10年目 | 0 | 4023 | 137979 | 482927 | 117 |
②ドルコスト平均法(10年に振分け)
入金/年 | 購入株数/年 | 総株数 | 年間配当 | 1株単価 | |
---|---|---|---|---|---|
1年目 | 100万 | 10000 | 10000 | 35000 | 100 |
2年目 | 100万 | 10098 | 20098 | 70341 | 103 |
3年目 | 100万 | 17839 | 37937 | 132778 | 60 |
4年目 | 100万 | 14160 | 52096 | 182337 | 80 |
5年目 | 100万 | 11479 | 63575 | 222514 | 103 |
6年目 | 100万 | 11580 | 75155 | 263042 | 106 |
7年目 | 100万 | 11672 | 86827 | 303893 | 108 |
8年目 | 100万 | 11755 | 98582 | 345036 | 111 |
9年目 | 100万 | 11830 | 110412 | 386443 | 114 |
10年目 | 100万 | 11897 | 122310 | 428083 | 117 |
③ドルコスト平均法(4年に振分け)
入金/年 | 購入株数/年 | 総株数 | 年間配当 | 1株単価 | |
---|---|---|---|---|---|
1年目 | 250万 | 25000 | 25000 | 87500 | 100 |
2年目 | 250万 | 25244 | 50244 | 175854 | 103 |
3年目 | 250万 | 44598 | 94841 | 331945 | 60 |
4年目 | 250万 | 35399 | 130241 | 455843 | 80 |
5年目 | 0 | 4426 | 134666 | 471333 | 103 |
6年目 | 0 | 4464 | 139131 | 486958 | 106 |
7年目 | 0 | 4500 | 143631 | 502708 | 108 |
8年目 | 0 | 4532 | 148163 | 518570 | 111 |
9年目 | 0 | 4561 | 152724 | 534534 | 114 |
10年目 | 0 | 4587 | 157311 | 550589 | 117 |
④暴落を待って資金を投入
入金/年 | 購入株数/年 | 総株数 | 年間配当 | 1株単価 | |
---|---|---|---|---|---|
1年目 | 0 | 0 | 0 | 0 | 100 |
2年目 | 0 | 0 | 0 | 0 | 103 |
3年目 | 500万 | 83333 | 83333 | 291667 | 60 |
4年目 | 250万 | 34896 | 118229 | 413802 | 80 |
5年目 | 250万 | 28289 | 146519 | 512815 | 103 |
6年目 | 0 | 4857 | 151376 | 529816 | 106 |
7年目 | 0 | 4896 | 156272 | 546951 | 108 |
8年目 | 0 | 4931 | 161203 | 564210 | 111 |
9年目 | 0 | 4963 | 166165 | 581579 | 114 |
10年目 | 0 | 4991 | 171156 | 599046 | 117 |
まとめ
同じ一千万円でも差が現れました。
総取得株数 | 年間配当 | 総資産 | 1株単価 | |
---|---|---|---|---|
① 最初に一括購入 | 137,979 | 482,927 | 16,079,396 | 117 |
② ドルコスト平均法(10年) | 122,310 | 428,083 | 14,253,344 | 117 |
③ ドルコスト平均法(4年) | 157,311 | 550,589 | 18,332,249 | 117 |
④ 暴落を待って資金を投入 | 171,156 | 599,046 | 19,945,681 | 117 |
①(一括購入)は最初に一括購入しているので、暴落期(割安期)にほとんど買えません。但し、暴落期がなかったとしても似たような結果になります。
②(10年分散)は資金投入の期間を長くしすぎて、最もパフォーマンスの悪い結果となります。
③(4年分散)は資金を持ってる期間に暴落期がきているので少し高くなっていますが、暴落期が6年後なら③は②とほとんど同じ値となり、①の一括購入を下回ります。
④(暴落待ち)は暴落期に大金を投入しているので、最も高いパフォーマンスを上げていますが、もし暴落期がなければエントリーすらできない人です。
4年以内に大暴落があるなら資金を分散投入した方がよく、暴落がないならば最初の一括購入がよいという結果です。この差は暴落期にどれだけ資金を投入できるかの差ですので、設定によっても変動します。 このケースにおいては①と③では20%近く差が開きました。
多少の機会損失を被っても、買い場を待った投資家が追いぬいていく事がある訳です。
現実的には、エントリーすべき相場ならばある程度一気に買い、対暴落戦のキャッシュポジションをとっておくことで①を確実に超え、③に近づける成績をはじき出せれば、といった所でしょうか。
但し、実際には未経験の金融商品に一気につぎ込むのは禁物です。しかしそれはまた別の話ですね。